REPORT-5-3

Report – 5

韓国の大学生にとってのアルバイトの認識
~鹿児島大学と全北大学を例に~

Team E
鹿児島大学 : 鮫島司 千々和駿 長濵心 針原康平
全北大学 : オムテヤン キムジヨン クヨンジン
チョンダヨン パクスジン

4.日韓でのアンケート調査の結果

以下では、全北大学の学生90人および鹿児島大学の学生75人を対象に調査を行った結果を整理して提示する。

表1と表2には、<1>「アルバイトをすることについてどう思いますか」という問いに対して得られた答えをまとめている。日本と韓国のデータを比べてみると、ⅱの「消極的評価」(つまらない、きつい、不安である)という項目に大きな差がでており、韓国の大学生よりも日本の大学生のほうがアルバイトに対して消極的な評価を持っていることが見て取れる。その他の結果に関しては、日韓ともに同様の結果となっており、日本の学生がアルバイトに対して消極的な評価を持っていること以外はアルバイトへの考え方は似通っていることが分かる。
また、<2>の「あなたは現在アルバイトをしていますか」という質問に対して得られた回答を表3および表4にまとめた。

表3および表4からもわかるように、日本の学生のほうがアルバイトをしていると答えた人が多い。しかし、ⅱの「過去にやっていたが現在はしていない」という回答は韓国のほうが多く、バイト経験はあるものの、現在はしていない学生が多いことがわかる。
次に、<2>において「アルバイトをしている」あるいは「過去にしていたが現在はしていない」と回答した者(ここでは「アルバイト経験者」とする)に対する質問の結果をまとめる。

<2>-1.生活におけるアルバイトの優先度(アルバイト経験者に対する質問)

韓国の大学生の過半数(55%)が「アルバイトは他のことと優先度が同じ」であると答えたのに対して、日本人学生の半数近く(46%)は「アルバイト以外のことが優先である」と答えていることがこのグラフから見て取れる。
この結果から韓国の大学生はアルバイトに対してより積極的な考えを持っているということが<1>のアンケートと照らし合わせても言えることが分かった。

また、<2>-2の平均就業時間は、日本が15.7時間であったのに対し、韓国では25.5.時間であった。<2>-3の基本時給は、日本が 840円であったのに対し、韓国では6,789ウォン(日本円換算で611円)であった。
この結果から、韓国人学生の方が日本人学生よりも平均就業時間がはるかに上回っていることが分かった。また、基本時給は韓国の方が安いが、現地での物価調査で日本よりもやや物価が安いことが分かったので、体感的な時給は同じくらいであると考えられる。
次に、業務内容についてまとめる(表6、表7)。

日本ではなかなか見られないようなアルバイトを行っている者もいるが、大多数は飲食店やホール、レジなど、両国ともに共通していることが結果からわかった。

次は、<2>-6の問い「アルバイトで貯めた金の使い道」である。表8を見ると、ⅰ(生活費・食費・学費)とⅱ(欲しいものを買う)に関しては日韓ともに回答者数の上位を占めており、グラフ全体を通して日韓での顕著な差は表れていない。アルバイトで貯めたお金の使い道は日韓でほぼ共通していると言えるだろう。
また、アルバイトと勉強を両立については、日本の場合「はい」と答えた人が79%、「いいえ」と答えた人が21%であるのに対し、韓国では「はい」と答えた人が55%、「いいえ」と答えた人が45%であった。これは、日本と韓国で顕著に差が表れたもののひとつであり、日本人学生の約8割は「両立できている」と答えたのに対して、韓国人学生では55%のみが「両立できている」と回答している。
では、実際の勉強時間はどうなっているのだろうか。アンケートの<3> で「一日の活動時間を10として、何にどのくらい時間を使っているか」という質問を行ったので、「韓国の、アルバイトをしている人の平均勉強時間」「韓国の、アルバイトをしてない人の平均勉強時間」「日本の、アルバイトをしている人の平均勉強時間」「日本の、アルバイトをしていない人の平均勉強時間」の4つを抽出して調べてみると、

韓国の、アルバイトをしている人の平均勉強時間  :2.84
韓国の、アルバイトをしていない人の平均勉強時間 :3.87
日本の、アルバイトをしている人の平均勉強時間  :2.18
日本の、アルバイトをしていない人の平均勉強時間 :2.27

という結果になった。日本人学生の平均勉強時間は、アルバイトをしている人、していない人の間にほとんど差はなかった。つまりアルバイトの有無が勉強時間を左右してはいない。
一方で韓国ではその差は顕著に表れており、アルバイトをしている人、していない人の間で大きな差がついている。
つまり、日本人学生は勉強時間が約2.2(一日の活動時間を10 として)を達成していれば「勉強が十分にできている」のに対し、韓国人学生は2.84では「十分な勉強時間を確保できていないから両立できていない」と感じているということが言える。
また、アルバイトの平均時間は前述のとおり、韓国人学生が日本人学生を圧倒的に上回っている。更にアンケートの<3>では活動時間10のうち、韓国人学生はアルバイトが3.13を占めており、一方の日本人学生は2.13であった。これらのことから、韓国人学生のアルバイトは活動時間のうちのウェイトを大きく占めており、それが勉強時間を削ることに繋がっていると言える。
<2>-7の「アルバイトと勉強を〇対〇の割合で重視していますか(全体平均)」という質問に対しては、以下のとおりであった。

アルバイト:勉強=4.2:5.8(日本)
アルバイト:勉強=4:6(韓国)

これをみると、アルバイトと勉強の重視比率の平均は日韓でほとんど差は表れなかった。また、<2>-6で「両立できている」と答えた人の、アルバイトと勉強の重視比率の平均は、   

アルバイト:勉強=4:6(日本)
アルバイト:勉強=3.9:6.1(韓国)

であり、「両立できていない」と答えた人の比率平均は 

アルバイト:勉強=4.2:5.8(日本)
アルバイト:勉強=4.1:5.9(韓国)

であった。重視比率とは「アルバイト:勉強に費やす労力の理想値」と言い換えられるかもしれない。日本人、韓国人問わず、また、「両立できている」「いない」と感じているに関わらず、理想値はほとんど共通しているものであった。
「労力の理想値」と「実際に費やしている時間」はイコールとは言えないだろう。本調査ではこの二つを関連させることができるだけの十分な調査ができなかった。
<2>-8「なぜアルバイトをしていないのか」は、アルバイトを現在していない、もしくはしたことがない人への質問である。結果は以下のとおりであった。

日韓ともにⅰの「アルバイト以外のことで精一杯」という答えが多くなっているが、次点のⅱ「必要性がない」という回答は日本人のほうが多く回答していた。韓国人学生にとっては何らかの理由で、アルバイトをすることに大きな意味を見出していることがわかる。<1> で、アルバイトをすることに関して消極的評価で著しく少なかったこともそれを裏付けている。
しかし、肝心の「アルバイトをすることの意味」は不明となってしまった。なぜなら、アンケートの翻訳ミスで「アルバイトをすることの目的」が消えてしまっていたからだ。非常に悔やまれる。
ⅳの「時間が合わない」に関しては韓国人の回答が多かった。前述の通り、韓国人学生の求める勉強時間は日本人より長く、一方のバイトも消費される時間が長いのだ。この回答が多いことには頷ける。
最後に<3>「1日の活動時間を10として、何にどれくらい時間を割いていますか(全員への質問)」の結果をみてみよう。

<3>について特徴的なのは、日本人学生はサークル活動の時間が1.8を占めているが、韓国人学生はほとんどサークル活動の時間をとっていないことである。聞いてみると、どうやら韓国の大学ではサークル活動は一般的ではないようだ。
また、勉強時間もアルバイトに費やす時間も韓国人学生の方が大きいことが見てとれる。このことについては前述した通りである。また、ここで注意していただきたいのは、このグラフはアルバイトの経験の有無を問わず、回答者全員を対象としたグラフであるので、アルバイトをしている韓国人学生はアルバイトの平均時間がさらに長く、アルバイトをしていない韓国人学生は平均勉強時間がさらに長いということである。
また、アルバイト、勉強、サークル活動以外の項目の占める時間は、日韓でほとんど差がなかった。