Report – 1
海外調査実習授業の概要
Team A : 竹下郁弥 菱川貴子 本嶋太貴
3.韓国での調査
以下では、韓国で実施した調査内容や調査した結果明らかになったことを一日ごとに分けて書いていく。
(3)現地調査3日目(8月28日)
この日は中間発表が行われた。A班の報告内容は(2)でも述べた通り、タイトルを改めて検討し直したことと、調査目的と調査方法を説明し、アンケートを利用した大学生の就職に対する意識調査を行なっていることと、および韓国と日本の3つの職業の比較を行っている点を述べた。そして、結論として、日本よりも韓国の方が就職や就労に厳しく、その理由にはベビーブームや大企業と中小企業の賃金の格差が原因にあるのではないかと推定していることを説明した。
発表時に、先生方から指摘された事を列挙すると以下のようになる。
・3つの具体的な職業について(キャビンアテンダント・金融・公務員)、全北大学とい
う地方大学と首都にあるような大学とでは実態が異なるのではないか。
・韓国と日本として大きな比較だけではなく、全北大学と鹿児島大学での比較も行うべきではないか。
・就活の過程と学生の意識を二分するのではなく、過程の中に意識を組み込む方が分かりやすいのではないか。
・就職活動と言っても男女で差は生じるのではないか。
・実際に就活を行っている人、または就活を終えた人にインタビューをするべきではないか(苦労話など)。
・アンケート調査の内容が意識調査として成立しない可能性がある(内容があまりにも薄すぎるため、それだけで意識とするのは理由が薄いのではないか)。
・まとめが韓国側に偏りすぎているのではないか。
これらの指摘を受けた後に、グループで再び会議を行い、これまで作ってきた枠組みをどう変えていくのか議論を行った。その結果、具体的な職業として挙げていたキャビンアテンダントを削除し、一般企業と公務員という2つの職業に区別して比較を行うことになった。キャビンアテンダントを削除した理由としては、職種が特殊であり、一般的な大学生が就職活動を行う際に少数派となってしまうためである。また、金融と公務員を一般企業と公務員という枠組みに当てはめて比較する方法がより良かったからである。結果的には、事前調査で設定していた内容に戻ることとなった。
調査の最終日に最終発表会が予定されていたため、そこに向けてさらに調査を行うことになった。最終発表会では、日本と韓国の全体的な就職活動や就労に関する比較を行った後に、公務員と一般企業における就職活動の相違点に着目し、まとめていくことになった。事前調査の時点で私たちが用意してきた鹿児島大学の文系・理系別の就職割合や就職先のデータと、28日に韓国人側の学生が事務局から取得してきてくれた全北大学の就職割合データを比較して、大学ごとの比較も行う予定であったのだが、全北大学のデータが文系理系別ではなく、総合的なものだけであり、就職したか就職していないかしかわからなかったため最終発表では利用しなかった。また、韓国側の学生の協力によって、公務員の就職活動を行った人(2人)と一般企業の就職活動を行った人(1人)にインタビューを行う事が出来た(写真2)。インタビューのデータは一般企業と公務員の比較の項目で韓国側のデータとして活用することになった。以下、インタビューで得られた情報について詳細に述べていきたい。
(ア)就職活動経験者へのインタビュー(公務員志望の韓国人)
今回インタビューに答えていただいた方は、日本語を専攻している大学院生の男性である。インタビューで質問した内容は、私たちの事前調査で明らかになっていた情報をベースにしながら、以下のように設定した。
・就活期間はどのくらいであるか。
・説明会は行われているのか。行われているのならば頻度はどのくらいであるのか。
・インターンシップは行われているのか。また、期間はどのくらいであるか。
・採用試験形式はどのようであるか。
・自己紹介書の内容はどのようであるか。
以下、インタビューした内容について順番に記していく。
まず、就活期間ついてであるが、この質問に対する答えには、韓国の公務員の種類と難易度が関わってくることがわかった。韓国の公務員は、9級、7級(一般公務員など)、5級(事務官級など)に分かれているという。一般的に言われているのは、9級が1~2年、7級が2~3年で、5級はこれら以上の準備期間が必要になるそうである。したがって、志望する公務員の難易度に応じた準備期間が必要になってくるのである
次に説明会は行われているのか。行われているのならば頻度はどのくらいであるのかについてである。以前は行われていなかったそうであるが、給料や雇用後の待遇など様々な面で安定性がある公務員の人気が年を経るごとに上昇し、最近になって説明会も行われるようになったそうである。頻度については、一般的に春と秋の年に2回であり、ソウルの公務員塾などの多くの公務員志望者が集まる場所で行われているそうである。しかし、説明会はソウルで行われているので、地方の公務員志望者は参加が困難になっているのが現状である。
そして、インターンシップについて。韓国でもインターンシップは行われているが、実施時期や期間は公務員の種類によって異なるとのことである。今回はインターンシップの中でも人気のある国会でのインターンシップについて話を聞くことができた。
なぜ韓国では国会のインターンシップが人気であるのかというと、給料が高いからだそうである。日本では公務員のインターンシップを行うことで給料は発生しないが、韓国では給料が発生することが日本と異なっている点として感じられた。また、国会のインターンシップを行う際に議員に気に入られたら、補佐官になれる可能性もあるという。このことも国会のインターンシップが人気である要因のひとつであるそうだ。
そして、日本の公務員と韓国の公務員のインターンシップで大きく異なっている点は、その期間である。日本の公務員のインターンシップの期間は、一般的に1週間くらいであるが、韓国の公務員は、3〜6ヶ月が一般的だそうである。このように韓国の公務員のインターンシップは期間が長いので、大学を休学して参加することが多いそうである。なぜ大学を休学してまでインターンシップに参加するのかというと、韓国の公務員のインターンシップは、参加することによってそれが就職に直接影響することが多いからだという。日本では、公務員のインターンシップに参加することでそれが直接的に就職につながることはない。この点が、日本と韓国の公務員のインターンシップで大きく異なる点として挙げられる。
また、採用試験の形式についてであるが、これも志望する公務員の難易度の違いによって変わるそうである。インタビューに答えていただいた方は、9級と7級に照準を合わせて対策をしていたので、9級と7級について詳しく話を聞くことができた。
まず、採用試験の過程について述べていきたい。韓国の公務員も地方公務員と国家公務員に分かれており、9級国家公務員の筆記試験は4月、7月に面接を行って、早くて8月に就職が決まる人もいるそうである。9級地方公務員の筆記試験は6月および8月に面接を行う。次に7級国家公務員の筆記試験は8月、10月に面接を行い、地方公務員は10月に筆記試験を行い、11月に面接を行うのである。日本の場合、公務員試験の実施時期は、国家公務員でも地方公務員でも大体同じであるので、韓国の公務員とは異なっていることがわかった。
また、筆記試験についても日本と韓国では異なっていた。韓国の公務員は共通試験が課されるが、公務員の難易度によってその受験科目数は変わるそうである。9級公務員は、歴史と韓国語、英語の3科目が試験で課される。7級公務員は、これらの3科目に加えて、受験者の専攻している分野について1科目がプラスされ、4科目が試験で課されるのである。また、日本の公務員採用試験では筆記試験の後に面接試験が課されており、その結果が内定を勝ち取るための大きなカギとなるのに対し、韓国の公務員の面接試験は形式的なものであるという。むしろ重要なのは筆記試験であり、筆記試験に合格すればほとんどの人は内定が決まるそうである。
最後に、自己紹介書について述べる。自己紹介書とは、面接の際に必要となる書類のことである。受験者の氏名や住所、持っている資格などの基本情報を記入する履歴書とは異なり、自己紹介書とは、就職後の目標や働きたい部署などのことを記入するそうである。
以上のことをインタビューして感じたことは、日本の公務員と韓国の公務員では、似ている点もあったが、異なる点の方が多かったということである。
(イ)就職活動経験者へのインタビュー(民間企業 金融系志望の公務員)
今回の民間企業(金融系)の就職活動に関するインタビューに答えていただいた方は、実際に金融系企業の試験を受けて合格された方である。インタビューで質問した主な項目は公務員志望の韓国人に行ったものとほぼ同じであるためここでは割愛する。また、自己紹介書と履歴書についてであるが、これも前述のものとほとんど同じであったため割愛する。
まず、就活期間はどれくらいであるかについて述べようと思うが、この内容は採用試験に関する項目と内容が重なる部分があるので、これらはまとめて述べるものとする。
インタビューを行った方によると、大学4年生の時から1年半ほど試験に向けて勉強をしたということであった。時期としては4月と9月に行われるようである。試験に関しては、SPIのような試験や複数回にわたって行われる面接など日本の採用試験と非常に似ている面がある。現在はこれらの採用試験に加えて、出身校がどこであるかというのも採用の基準とされる場合もあるようである。
また、資格についてであるが、韓国では金融系に限らずほとんどの企業でコンピュータ活用2級とワードプロセッサーという2つの資格が必要となる。これに加えて、金融系の企業ではファンド投資銀行家、証券投資銀行家、派生商品投資銀行家という3つの資格が必要であった(この3つの資格は「3重セット」と呼ばれている)。しかし、2015年以降はこれら3つの資格が採用試験の時に必要ではなくなり、その代わりとして前述のような適性検査や面接、自己紹介書及び履歴書の提出が重要となったのである。そして、「3重セット」といわれていた資格は、採用試験に合格して入社後に取るようになったのである。
次に、説明会については、学校ごとに行われることが多いようである。これは鹿児島大学でも行われているような企業説明会と似通った点がある。説明会が行われるときはその大学の近くの支店の人が説明会に来るケースがほとんどである。日本で行われているような合同企業説明会のようなものはソウルで開催されているということであった。開催頻度については、そもそも学校ごとに行われるため具体的な回数を断定するのは難しいと判断される。
そして、インターンシップは行われているのか。行われているのであれば期間はどのくらいであるかについてであるが、5年ほど前から1年中行われるようになったという。それ以前は長期休みがある8月等に行われるのが主流であったが、現在はそうでもないのが現状である。期間としては、長くても1か月ほどで短ければ1週間ほどである。日本のインターンシップも1dayインターンや5日間のみの短期インターンや1か月以上働く長期インターンがあり、インターンシップの期間が多様化しているという点は共通しているのではないかと思われる。
以上のことを実際にインタビューしてみて感じたこととしては、説明会からインターンシップ、採用試験という流れが日本のそれと似ている点が多いということである。

△写真2 韓国の学生に通訳してもらいながらインタビューをする様子
以上の調査成果を踏まえ、最終発表に向けて準備を行った。日本側の学生がスライドを作り、韓国側の学生には韓国側の現状に関する部分については日本語で発表してもらうことになった。この際グループのメンバーを3つに分け、それぞれ以下の内容を作成した。
・日本と韓国の就労や就職活動の比較について
・公務員の比較について
・一般企業の比較について
作成にあたっては、互いの国の情報を共有しながら原稿作りを行った。韓国の学生側の発表する日本語の原稿については日本人学生が協力しながら一緒に作成した。
最終的にまとまったタイトルは「日本と韓国における就職活動について」であり、調査目的としては「韓国と日本の就職活動や就業状況を比較し、2つの国での相違点を明らかにする。さらにそれらの相違点の背景となる原因を考察するため」とした。最終的な結論としては、中間発表の際に利用した「ベビーブームによる人のインフレ」と、「大企業と中小企業における賃金の格差」を根拠にしようという話になったのだが、ベビーブームを根拠にするならどこかでデータを発表に組み込む必要があるということになり、うまくまとまらなかったので大企業と中小企業における賃金格差をベースとし、ベビーブームを理由とすることは保留にすることになった。
(4)現地調査4日目(8月29日)
この日は最終報告会が行われた。最終発表会でのスライドの大まかな流れとしては、まずこの3日間の紆余曲折について話した上で、本論に入るというものであった。最終発表を終えた後の先生方のご指摘としては以下のようになる。
・調査のデータから考えられる結論としての韓国と日本の違いの原因となるものが述べられていない(データの列挙になっている)。
・データ自体に不適切なものが見られる(2016年の学生就職割合調査の日本側のデータについて再確認を行うべきではないか)。
・韓国と日本における中途退職率についても調査するべきではないか。
・実際に働いている人達の苦労話を入れるべきではないか(データとしてしか表示されていないので、そこに存在する人々の様子まで入れたら良い)。
・働いている方に実際にインタビューを行うことで日本と韓国の就業の比較もするべきではないか。
これらのご指摘を頂いた後に、グループで話し合って、韓国側の学生に韓国の中途退職率のデータを入手してもらった。苦労話としては、インタビューを行った際に録音していた音声を活用できるのではないかという話になったので最終発表の後に改めてインタビューを行うことはなかった。