REPORT-1-2

Report – 1

海外調査実習授業の概要

Team A : 竹下郁弥 菱川貴子 本嶋太貴

3.韓国での調査

以下では、韓国で実施した調査内容や調査した結果明らかになったことを一日ごとに分けて書いていく。

(1)現地調査1日目(8月26日)

全北大学にて最初のミーティングを行った。まず、日本側の学生の調査内容について韓国側のグループリーダーに説明し、それを韓国側の学生に伝えてもらった。すでに述べたように、事前調査では文系学生と理系学生の比較を行う予定であったのだが、全北大学ではそもそも文系と理系に区別することが難しいとのことであったため、文系・理系を問わず学生にとっての就職活動という大きな枠組みで調査を進めていくことになった。また、インタビューを行おうと考えていた全北大学の就職支援センターが週末に空いていなかったため、韓国における就職状況については韓国側の学生に全面的に頼ることとなった。
両国における就職活動の状況を互いに情報交換をする中で、韓国側の就職に対する厳しい現状を知った。そこで方針としては、韓国と日本を比較して、どちらが困難な状況にあるのか、またその状況はどうして発生するのかまで突き止めることに決定した。
韓国の学生に就職活動に関する話を聞いてみると、「7重セット」とよばれるものが存在することがわかった。内容としては、「インターンシップ」・「出身大学」・「語学研修」・「TOEIC」・「資格」・「公募展」・「単位」である。なお、「公募展」というのは日本の就職活動における会社説明会と似ていることがわかった。
韓国と日本の就職活動において、どのような相違点が見られるかを把握するために、リクルートの人気職種ランキングの上位3つをピックアップして、その職種に就くために行われる就職活動を韓国と日本の場合に分けて調査することになった。なお、ここにおける人気職種ランキングは文系学生のものだけである。文系学生に絞った理由としては、理系学生まで含めてしまうと仕事の幅が増え、広く浅い調査しかすることが出来ないと考えたためである。調べる事項としては、その職種に必要な資格・単位、TOEICの点数・インターンシップ・就職活動期間・その職種において重要視されるものは何かという点である。
私たちが実際に調査した職種は、客室乗務員・金融・公務員の3つである。客室乗務員に関しては、航空会社の上位3位に入っていた航空会社の中でもイメージされやすく、韓国でも日本でも広く認知されている職業であるという考えから決定した。
それぞれが3つの職種について韓国側と日本側でデータを共有し相違点を見出したところで、その中でも特にはっきりと分けられる違いをいくつか列挙し中間発表で発表することにした。以下、3つの職種について調査した内容を記していく。

(ア)日本と韓国の客室乗務員の比較

客室乗務員については、職種が特殊なため両国とも専門学校に通っている点など、共通点が多く見られた。その中でも特に異なる点として着目したのが、韓国の男性が客室乗務員になる際には、兵役を終えていないといけないという点である。兵役は韓国の男性が大学生や20〜30代の間に基本的に終えるものであり、就職するにあたっても兵役を終えた人が好ましいと考えられているのだが、明確に受験条件として掲載されている点から社会構造の違いを伺うことが出来た。
また、就職するにあたって有利な資格としては、日本では医療系、看護系の専門的な国家資格や、サービス介護士検定が有利となるのに対し、韓国では武術に長けている人が有利とされている点が大きく異なった点である。

(イ)日本と韓国の金融系職種(銀行員)の比較

・インターンシップ
日本のインターンシップは1~5日間の期間で行われることが多く、時期としては夏期に開催されることが多い。韓国のインターンシップも期間はほとんど同じであり、開催時期が3月であり、その点が異なる。
・資格
日本では入社するうえで必要となる資格というものはないが、SPIや銀行独自の試験及び面接や書類選考などで採用の決定がなされる。しかし、大卒が必須とされていることがほとんどである。韓国では、AFPKやCFPといった資格があり、これらの資格を取得して就職するというのが一般的である(取得していなくても就職することはできるが就職後の職場環境において不利になる)。韓国ではこれ以外にも必要な資格が多いが、その代わりに採用試験がない。
・採用年齢
日本では大学卒業者の採用、つまり新卒採用がほとんどであり、中途採用者はほとんどいない。採用試験への対策としては人によってさまざまであるが、主に3年生から就職活動が始まる場合が多いので、その時期に対策が開始することが多い。韓国では逆に新卒採用はほとんどなく、大学在学中に2~4年間勉強(主に資格関係)し、大学卒業後も就職のための勉強をする。そして、採用されるのは20代後半から30代前半になるのが一般的である。

(ウ)日本と韓国の公務員の就職活動

両国の公務員の就職活動を比較するべく、必要な資格・単位、TOIECの点数・インターンシップ・就職活動期間、そしてその職種において重要視されるものは何かという点を中心に調査した。
まず、必要な資格等についてであるが、これは両国共通して原則必要ない。公務員になるためには一般に、筆記試験と面接が課されるのである。したがって、公務員になるために特別な資格は必要ないのである。ただし、就きたい職種(看護師、教師、保育士など)によっては必要な場合もある。
次にインターンシップについてであるが、これは「就職活動経験者へのインタビュー(公務員志望の韓国人)」の項で詳細に後述するので、ここでは軽く触れることにする。まず、インターンシップの行われる時期は業種によって異なるので、一般的にばらばらである。しかしその実施される期間は、韓国は長期間であるのに対して日本は短期間である。また、就職活動の期間については、その人が受ける試験の難易度に応じて準備期間は様々である。これは、両国共通して言えることである。したがって、日本と韓国どちらも就職活動の期間はばらばらなのである。
最後に、公務員を目指すにあたって重要視されるものは何かという点についてである。両国共通して、採用されるには試験の結果が全てであるため、採用試験の対策をしっかりすることが重要であることがわかった。特に韓国は、面接試験の前に実施される学力試験に力を注がなければならない。なぜならば、韓国では面接試験の結果よりも学力試験の結果の方が重視されるからである。一方、日本では学力試験と面接試験の結果を総合的に判断して採用不採用を決定するので、両方の試験の対策をしっかり行わなければならない。

(2)現地調査2日目(8月27日)

具体的な比較点を3つ決めることができたため、中間発表に向けて調査した情報の整理を行った。具体的には、仮タイトルを決定し調査目的と調査方法を説明し、日本側の学生が日本で行ってきた調査、および1日目(8月26日)に調査した内容について報告した後に、今後の計画を説明することになった。この時点での発表タイトルは、「日韓の大学生の就職意識調査と韓日就活の過程比較」とし、調査目的を「韓国と日本の就職状況の違いを明らかにし、お互いの相違点の中でも特に異なる点について理解し、さらにその原因を考察する」こととした。そして、それらを明らかにするためにさらにアンケート調査とインターネットを使った就職状況に関する情報収集を行った。

(ア)調査方法1:アンケート調査 (対象:韓国と日本の大学生)

アンケートの内容としては、調査目的にもあるように、韓国と日本の就職状況の違いを明らかにするために学生の意識を調べる必要があると考えたため、「就職をいつから意識したか」「就職に向けていつから準備をしたか?(または準備をするつもりか)」「どのような基準で会社を選ぶのか?」「就職に関する情報をどこで入手するのか?」という項目に答えてもらった。
実施には、事前調査の時点でアンケートを作成していたのだが、そのアンケートは「就職活動に対する現状把握」に関する内容になっており、今回調査内容に含めた「日韓の大学生の意識調査」を把握することができないと考えた。そのため、そのアンケートは使用せずに新たにアンケートを作成した。なお、実際に行ったアンケートは以下の通りである。

以上のアンケートを作成した上で、韓国側と日本側の学生でノルマを50人と設定し、お互いの知人などにSNSやインターネットを活用し回答をお願いしてもらった。

(イ)調査方法2:インターネットを使ったデータの入手

韓国と日本の就職活動の違いを明らかにするために、日本と韓国における就職状況のデータおよび年収のデータを、インターネットを利用し取得した。韓国と日本の就職状況としては、2015年のデータが最新だったため2015年のものを利用した。その結果、韓国における大学卒業者の就職率は67.5%であるのに対し、日本では72.6%であることがわかった。
また、2015年にOECDによって調査された各国の年平均労働時間と平均年収に関する情報をみると、2015年時点における韓国の年間労働時間の平均が2,113時間で年収平均が33,110ドルなのに対し、日本の年間労働時間の平均は1,719時間で年収平均は35,780ドルである。韓国の年間労働時間は2,113時間と世界的にも長いが、1時間あたりの賃金を日本と比較すると、韓国が1時間につき約15ドルの賃金をもらっているのに対し、日本では1時間に20ドルの賃金をもらっている。それゆえ、私たちは韓国の方がより困難な環境にあり、より安定した公務員などの職種に多くの人数が偏る現状があるのではないかと考えた。
さらに、中間発表において結論を出すにあたって、私たちは仕事に対する日本と韓国の考え方の違いに注目した。日本では就職してから資格や専門知識を取得することが一般的であるのに対し、韓国では就職する際に既に専門知識が必要であり、即戦力となる人材を募集しているという点である。また、ベビーブームによる団塊世代が韓国の労働者の中に多く存在していることより、就職許容人数と就職希望人数に大きな差が生じて就職率の低下や競争率の上昇を引き起こしているのではないかという意見も出た。さらには就職状況について影響しそうな経済の現状としては、韓国における大企業と中小企業の正規賃金の格差が日本の格差と比べて大きく差が生じていることも論点となった。
これらの調査から、大卒という高い学歴に見合った働き口が少ないのではないかという考えがまとまった。そして、2日目の調査結果から、「ベビーブームの団塊世代による人のインフレ」と「大企業と中小企業による賃金の格差」の2つを原因の理由と推定し、韓国の現状をどう変えるべきかというまとめにつなげていくことになった。
また、インターネット調査を進めるうちに、「日本は韓国の10年後」というフレーズを見掛けるようになったので、これからの調査の中では日本の良い点や悪い点を見出して、現状を解決する具体的な案を考えていくことにしてみようという話になったのだが、日本が韓国の10年後だという根拠となるデータがあまり取れなかったため韓国側と日本側の学生の中での曖昧な共通認識として把握するに終わった。